昨年末から海外のフォーラムでSTM32チップが入手難であると話題になっているようです。

 

汎用マイコンにまで及ぶ半導体不足


型式ごとに状況は異なるようですが、最も困っているとの投稿が多いのがSTM32F103シリーズで、次いでSTM32F0xxシリーズです。

STM32F103はBluePillと呼ばれる中華開発ボードにも使われ、48pinのLQFP品で約150円、64pinのLQFPで200円程度で入手できた良コスパ品だったために世界中で使用されていました。

中華互換チップも多いのですが、つられてそちらも値上がりしています。

STMicroからの供給が渋くなった理由としてCOVID-19の影響が挙げられていますが、2020年11月にEU域内のSTMicroの工場で大規模なストライキが行われたことが大きく影響したようです。

(参考:フランスのSTmicroの工場でストライキ続く @eeNews Europe)



STM32は医療関連機器でも多く使用されているという事情もあり、高価でもいいから調達したいと表明している業者もあるとのことで、こういった奪い合いが価格の上昇に繋がっているものと思われます。

EEVblog Electronics Community Forum に寄せられた投稿ではSTM32F030RCT6を1つあたり$14で1000個以上欲していた業者もあったとのことで、これは平常時の10倍以上の価格です。

その業者は日本のチップワンストップに5000個在庫があることに気づき、早速買い占めたようです。


ところで私が採用している型式では、まったく買えなくなってしまったものや、以前は10kU価格(STMicro ⇒ 商社の10000個卸値)に近い値段で買えたのに、2~3倍の価格になっているものなど様々です。

ホビイストが以前の価格で入手できるようになるには1年くらいかかるのでは?という投稿もあり、半導体不足の連鎖が広がっているなぁと実感します。

ちなみに10kU価格についてはCubeIDEのチップセレクター画面で確認可能です。事実上の入手することのできる下限価格ですから、一通り眺めるのも面白いです。

 

余談


この件を調査していて見かけた投稿ですが、STM32の互換チップで有名なのは中国のGigaDevice社のGD32ですが、ロシア製の互換チップもあるようです。但し汎用品として市販されておらず、ロシア国内で軍や科学機関が使用する目的で製造されているとのこと。

本当なのでしょうか?ロシアの軍事用MCUについては英語の情報すら見つかりません。

そこでロシア語で探してみると、それっぽいものを発見しました。MILANDRなる会社のK1986BE92QIという石がSTM32F103(Cortex-M3)と互換性があるようです。ARM社とはライセンス契約を2008年に結んでいるとのこと。

従業員650人程度でかなり規模が小さいようですが、ロシアの国産MCUを支える企業なのでしょう。全然知らなかったので調べていて面白かったです。

アリエクでSTM32チップを買って勉強してるっぽい人はロシア人が多いのですが、ロシア人と中国人のSTM32に対する執着は、違法コピーではないゼロベース互換チップを生み出すのですから驚愕です。
 

続き STM32の生産体制について