今月8日に英国王立防衛安全保障研究所の報告書が公開され、ウクライナで回収されたロシア軍の兵器の残骸から大量に西側の半導体が見つかったとの記載がありました。

 

ロシアによるウクライナ侵攻が始まる10か月ほど前、当サイトでロシアの半導体企業MILANDRのК1986ВЕ92QIがSTM32F103クローンっぽいと投稿しました。

 

その後、その石が具体的にロシア軍でどのように使われているのか調べてはみましたが、当時ロシア兵器のデバイスを研究・公開している情報は皆無。まさかこのような形で内情を知ることができるようになるとは思いもしませんでしたが、民生品のオンパレードなのは「やはり」といった印象です。

 

報告書では9M549ロケット弾、ORLAN-10偵察ドローン、KUB-BLA自爆型ドローン、9M727イスカンデル弾道ミサイルなど多種多様な残骸を調査した模様で、テキサス・インスツルメンツとアナログ・デバイセズの製品が突出して多いようです。


他にはAltera(現INTEL)やXilinxのFPGA、CPLDほか日本メーカーのチップコンデンサやインダクタなども見つかっているとのこと。

 

報告書より国別の構成部品数
(Silicon Lifeline:Western Electronics at the Heart of Russia's War Machine)

 


しかしこれらは民生品であり、輸出規制は大きい効果がないと思われます。第三国を経由し、いくらでも流入するからです。特に中国からの物流を規制できなければ厳しいのではないでしょうか。

 

CycloneとかSTM32とかいくらでもAliexpressに売ってますから、止めるのはかなり難しいでしょう。航空宇宙規格でもないような民生品でここまでの兵器を揃えたロシアのローテクさが逆に厄介ともいえます。

 

 

それ故、誘導方法が多くの場合で GLONASS頼みなのも分かりました。米国兵器のような高度なセンシング・フィードバックは苦手なようです。


STM32F103VCT6がORLAN-10の制御MCUとして見つかっているようですが、STMicroelectronicsがスイス企業として紹介されていることが気になりました。

 

本社スイスなので間違いではないのですが、SGSとトムソン合弁の経緯の便宜上のもので実際は イタリア&フランス企業なのですが、変なところでタゲそらしとして機能してしまったようです。